TSA-102S 見参
 
 3/10〜5/10と気流は安定しない。まあ,今の季節は仕方ない。
 まあ短時間でも見えるかもと,高倍率用アイピースを出してくる。最近はこの高性能アイピースの見え味を記憶しておこうと考える。
 そんなわけで,今宵はSV215とXO5mm。
 概ね,SV215は良く見えます。通常はこれで満足できるレベルだと,個人レベルでは思ってる。このSV215の5mmレンジとXOとの比較。ぱっと見は大きな違いはない。ところがこの2つを小一時間見ていると明らかな違いがわかってくる。XOではSTBとSSTBの間の白い部分がわかったりわからなかったり。SV215では,ほとんどわからない。NEB,SEBの凸凹感もXOの方が緻密。
 良シーンイングのときでの比較ではないので,あまり参考記録にはならない。まあ,今夜は大きな違いはわからなかったけどXOは優秀かなって。
 
 しっかりとピントが出るレンズですが,ピントノブが普通に粗く,ベストピントにもっていくのに何度も繰り返すことがあります。最近は減速微動装置が付属しているものが多くなっていますがTSAにはありません。別売で取り付け可能な器具も販売されていますが,それほど良い評判は聞きません。それに取って付けたような外見がどうも。
 そこでBORGのヘリコイドTを取り付けることにしました。タカハシ規格の72mmとBORG規格の68.8mmのネジを繋ぐのに,特注で専用接続リングを作ってもらいました。ヘリコイドTは決して細かい調整が可能なヘリコイドではありませんが,径が大きいためゆっくり回すことで微調整が可能になります。
 また,サードメーカーの接眼部回転装置と接続リング,ヘリコイドT,延長チューブ(短)等を合わせると,重量もかせぐことができて,若干フロントヘビーな鏡筒も良いバランスで取り付けることができるようになりました。
 
 月齢11.8の大きな月。プラトー内部の小クレーターに向ける。本当は前日の月齢の方が見やすかったような気がする。
 今夜はすぐに3個がわかる。この締まった見え方をAL-106では見たことがありません。
 続いて土星。いつものシャープな見え味。先般の『超絶』をまた見たいと思っているが,気流の塩梅なのでしょう。今夜は普通のシャープさでした。
 続いて木星。やっぱり今季の木星はNTB,STBの色が薄い。
 この夜の収穫は,NEB,SEBの凸凹の向きがわかってスケッチできそうに見えること。270倍でも輪郭はタマゴの黄身型にシャープさが保持されて見えていること。これは素晴らしいイメージです。もちろん模様もあまり薄れません。TSA光学系,お見事。
 
 衝が目前の木星,ここのところ連夜で観察中。
 恒星のまたたきは少なそうですが,やっぱり気流は良くありません。概ね惑星は夏場に限ります。
 それでも,緻密さが伝わる見え方をします。淡いNTBもSTBもわかります。合計4本。大口径で撮影された木星像の主立った縞模様も4本。これを繊細に見えたので良しとしましょう。
 
 気流はイマイチだが透明度は良し。深夜に木星観望。
 気温差,レンズが冷えるまで15分程度。それまでは見えることは見えるが,若干ピリッとしないイメージ。肌寒くなってきた頃に見え始める。ぱっと見て縞模様は5本。NTB,STBの凹凸も良く見える。端から大赤斑が見え始めるも赤っぽさが良くわかる。一番良いイメージは200倍。272倍でも前回同様に,シャープさは維持。模様の細部も見えている。150〜170倍程度まではAL-106と解像度,コントラスト,色合共に大きな違いはない気がする。(木星に関しては)200倍以上で差が明らかになってきます。
 その後,高度が上がってきたすばるを見る。星像はシャープだけど,AL-106より焦点が長い分,倍率が高め。全体像を味わうことができません。
 
 10月になって,じわじわと気流の乱れが目立つようになってきた。今宵もそう。見た目は悪くないが薄雲が動いている。前回見えたような『超絶』はありません。惑星は気流が勝負。
 そんな中,土星観望。SV215とHR3.4mmで見比べ。なぜかHRの方が暗くて,良く見えない。SV215が明るい。なぜでしょう?
 薄雲があるが,レアが見えました。
 
 前回よりは気流はまし。それでも秋風に秋空。夏の安定気流ではない。
 そんな中,当機材にて初木星。覗いてビックリ!4大衛星全部に回折リングが巻き付いてる。淡いリングだけど,4つ揃うと印象的にずいぶんと賑やか。AL-106でもたまに見かけたことがあるが・・。
 そして倍率を上げ下げしながら,しばらく木星観望。見え方はAL-106とそれほど変わらない感じ。STB,NTBが薄くて細いので見えにくい。とりあえず凝視していること15分。おそらくレンズが外気温に馴染んできたのか,ぐっと見え出してくる。輪郭はシャープ。倍率を上げてみると,272倍でも模様が薄れることはなくシャープさを維持。これはAL-106と大きく異なる見え方。この違いは大きい。AL-106でもとても良く見えたが,木星での倍率上限は200倍程度まで。それ以上は,模様が薄れたり輪郭がぼやけたりしていた。TSAではそれがない。
 片づける前に,少し土星にも向けて見た。
 前回の土星より明らかに落ち着きがあり,なかなか衝撃的なイメージで超絶シャープ。もう,これだけ見えたら,言うことないですというイメージ。細くなった環両端のカシニの空隙も確認できる。本当にシャープ。
 文字通りのFirstLightです。
 透明度は市内にしてはまずまず。ただし,薄雲もあり,気流が落ち着かず風も強い。
 けっこう悪条件の中,土星とベガを観望。
 覗いてみて一番の感想は,視野がかなりクリア。これはFLT-91に似た印象。風の中,土星は良く見えてる。カシニの空隙も良くわかる。環の手前と向こう側の違いも明確。輪郭もシャープ。倍率は,273倍でも解像感100%。まだ倍率は上げられそう。衛星がタイタン以外に,限界に近い,かすかな衛星も含めて数多く見えてます。このあたりは9cmとは違うところ。土星に関しては言うことありません。これでシーイングが良ければどれだけ見えるのか楽しみ。
 ただ,AL-106とどう違うのか同じなのか,そこがポイントかと思われます。
 ベガは,焦点内外像を見て光軸が狂っていないかのチェック。風の中,内外像は○です。
 望遠鏡は人生の友。最後の一台として,大きくも小さくもなく良く見える望遠鏡と出会いたいと思ってました。現状,その形に一番近いのはAL-106鏡筒。良く見える鏡筒だと思っていますが,それでもできれば日本製の筒がいいなあと。
 本当は国産の最強屈折を待っていたのですが,いつまで経ってもその気配もなく。
 仕方なく,現時点では(次点の)TSA-102しかないかと,探してはいたんです。
 ※CloudyNightにて,世界屈指の屈折機との評判が多数。
 そして,たまたま見たネット上での中古物件。
 ほとんど使用しなくなっていた,フローライト鏡筒,高性能ズームアイピース,9cm屈折鏡筒,極軸調整器具,フラットナー,その他諸々を処分。
 それが今回の出会いとなりました。
 年数は経っているものの,とてもきれいな状態で,レンズ裏側に,小さな点状の埃が一つ付いてるだけ。他には汚れも傷も見つけることができない美品でした。
 望遠鏡との出会いは,一種の縁だと思っています。これから,この出会いを味わってみたいと考えています。